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日本語と英語は言語としての構造が異なります。

特に日本語と大きく違うのが、英語は相手に誤解を与えないように名詞の意味をハッキリとさせる点です。(名詞=物の名前を表す言葉)

数をハッキリさせる(単数なのか複数なのか)

どういうことなのかと言いますとまず第一に、喋る時にそれが数えられるような名詞であれば、『単数』なのか、『複数』なのかをハッキリさせます。

単数か複数か

例えばあなたがテーブルに夕食を並べていて、グラス(コップ)が足りないことに気がついたとしましょう。

グラスが欲しい

そこで旦那さんにグラスを取ってきて欲しいと伝えます。

『Could you bring me “グラス”?』

と相手に言うのですがこの時に、その”グラス”は『one glass』(単数)なのか、『two glasses』(複数)なのか相手にハッキリ伝えてあげるのが英語の約束事です。
相手が何個グラスを持っていけばいいのか迷わないように、出来るだけ正確な数を伝えてあげようというわけです。
(2つなのか3つなのか厳密な数は問題ではないがとにかく複数のグラスが必要な場合なら、『bring me glasses?』や『some glasses?』と表現します)

『何個必要なのかは見ればわかるんだから、毎回正確な数を言う必要はないんじゃない?』というのが日本語の感覚ですが、そこを一々ハッキリさせるのが英語のルールです。
英語はこの数意識が非常に強い言語で、可能な限りいくつなのか数をハッキリ表現します。また単数なのか複数なのかも重要で、ここをハッキリ区別させることで細かなニュアンスの違いを表現します。

例えば足を骨折した場合、日本語では「足を骨折しちゃって大変なんだよ」と言います。
足の骨折

ここでは足を何本骨折したかはわからないわけですが、話し手は『足を骨折したという事実』を伝えたいだけなので日本語の感覚では何の問題もありません。
聞き手も「まあ大変ですね!」と返しますし、興味があればどこでどんな状況で骨折をしたのかを聞き返すでしょう。

しか英語では『I have one broken leg.』で片足を骨折したことが明確に伝わります。
聞いた感じでは、骨折した本人は大変でしょうが松葉杖を使えば自力で歩けそうです。

そして『I have broken legs.』であれば両足とも骨折(足は2本しかないので複数形なら両足を指す)している事が明確になり、車椅子を使わなければ移動もままならない、聞き手の反応も「さぞ大変ですね!」という感じになります。

日本語は必要でなければ名詞が単数か複数かにはこだわらないのですが、英語はかならず数をはっきりさせる前提で会話しています。
やたらと数を意識しているのには聞き手により正確な情報を伝えるためなのですが、さらにもう一つ理由があります。

数をつけない場合は別の意味になる

逆に単数・複数の区別をつけずにただ『glass』と言うと、わざと数をつけずに『glass』という言葉を使っていると聞き手はとらえます。

どういうこかと言うと、『glass』には『ガラス』という意味もあり、物の素材である『ガラス』は数えられるようなものではありません。
そのため数をあえて付けない『glass』という単語は、『ガラスという素材』を表す言葉になります。
つまり『Could you bring me glass?』では、『ガラスを持ってきてくれる?』という意味のわからない文章になるわけです。

glass-material

というわけで『グラス(コップ)』を持ってきて欲しいのなら、
『Could you bring me one glass?』か
『Could you bring me glasses?』と数を意識した言葉にしないと意図が伝わらないのです。

もちろん聞き手も状況から推測して、『ガラス』ではなく『グラス(コップ)』のことを話している、多分◯個持っていけばいいのだろう、という判断は出来ます。
ただ英語の感覚では非常に妙な言い回しで理解に労力を要します。状況によっては誤解を招くかも知れません。

英語では数えられる物の話をするなら数をハッキリとさせ、数えられない物について話しているならわざと数を付けません。
つまり『one glass』 と 『glass』は別の単語なのです。
そして英語のネイティブスピーカーはこの前提で喋っていますので、この『数意識』を抜きにしては会話をすることが出来ないのです。

辞書で名詞を引くと、『countable』(数えられる=可算)、『uncountable』(数えられない=不可算)といちいち書いてあるのはこういった理由なのです。

英語のネイティブスピーカーの考え方

もっと詳しく言うと、英語のネイティブスピーカーは喋ったり書いたりする時に、まずその話したい物がどのカテゴリーに入るのかを考えます。(数えられるか数えられないか。単数なのか複数なのか)
そしてその後で、その物に相応しい名詞が何なのかを考えます。

名詞のカテゴリーわけ

グラスの例ですと、

「水を入れるものが2つ欲しい・・・」

「それは数えられるものだな・・・」

「えーと、two・・・two・・・水を入れるものの名前は・・・glass!」

「two glasses!」

という思考の流れを無意識に行っているのです。

まとめ

日本語と英語は言語の構造が異なる、という意味がご理解頂けたでしょうか?

日本語は特に必要でなければ数を厳密には表現せず、相手の常識に任せます。(例:グラス持ってきてくれる?)

しかし英語は数をハッキリさせることを前提とした言語です。(例:Could you bring me two glasses?)
逆に数を付けない場合は、わざとそうしている、つまり数えられないような概念の話しをしている、という前提がありますので単語の意味が違ってきます。

『one glass』=グラス(コップ)
『glass』=ガラスという素材

ただしここで大事なのは、あくまでも相手に誤解を与えないように言葉の意味をハッキリとさせているということです。
『ものを一つ一つとして認識する必要がない』場合であれば、数えられるようなものでも数をつけません。

例えば『hair』という名詞はよく『I have gray hair.』(私は白髪だ。)と数を付けずに使われます。これは髪の毛が全体的に白髪であるということを表現しており、何万本もある髪の毛1本1本を問題にしているわけではありません。
逆に『I have two gray hairs!』であれば、これまで全然白髪がなかった人が2本白髪が出来ているの発見してしまって嘆いている、というニュアンスが伝わってきます。この『hair』は髪の毛1本1本を意識しているので、とうぜん数が付きます。

我々日本人にはどうしても馴染みにくい感覚なのですが、こういった日本語と違う英語の論理が理解できてくると英語が身近なものになってきます。
今後英語の文章を読むときや会話を聞く時は、名詞が単数なのか複数なのか、またはあえて数を付けていないのかを意識してみましょう。

補足

なお単数を表す『one』という単語は会話の中で頻繁に使うので、『a』と省略するのが普通です。つまり『a glass』でグラス1つという意味になるわけです。

oneはaと省略される

そしてこの『a』は分類的には『冠詞』(article)というものになります。冠詞は英語において非常に重要な要素で、日本語にはない概念ですので日本人には理解しにくいものになります。
なぜなら冠詞『a』には『one』以外にも別の意味が含まれておりもう一つの冠詞『the』と使い分けることで非常に細かなニュアンスの違いを表現しているからです。

今回の説明で単数と複数を厳密に分ける理由をあまり感じられなかった方もいると思いますが、この冠詞『a』を理解することでその理由が実感頂けると思います。

というわけで次回は、この冠詞についてご説明します。

(なおこのコラムは主に、マーク・ピーターセン著『日本人の英語 (岩波新書)』という本を参考に書かれています。高校生の必読書に指定して欲しいぐらいの良書ですので、ぜひ読まれることをオススメします)

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